捜査権の乱用は法の施行を待たずに始まっているのではないか

「海外の児童ポルノアドレス掲載 19歳少年を書類送検
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/090708/crm0907081245016-n1.htm
MSN産経ニュース
海外の児童ポルノサイトのアドレスを掲載する掲示板を開設したとして、神奈川県警少年捜査課などは8日、児童買春・児童ポルノ禁止法違反(公然陳列)の幇助(ほうじょ)容疑で、千葉県流山市の私立大学2年の少年(19)を書類送検した。

 県警の調べによると、少年は昨年8月、不特定多数から児童ポルノサイトのアドレスが掲載されることを知りながら、同アドレスを掲載するネットの掲示板「関西○交」を開設した疑いが持たれている。

 県警によると、海外の児童ポルノサイトのアドレス掲載をめぐる同法違反の適用は全国で初めて。少年は容疑を認め、「児童ポルノが好きで画像を集めたかった。違法だとは思わなかった」と話しているという。


「陵辱系ゲーム「レイプレイ」無修正ソフトが流出 風俗店店員を逮捕」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090709-00000528-san-soci
(ヤフーニュース(出典は産経新聞))
 性暴力を疑似体験する市販のゲームソフトの改造版をインターネット上に流したとして、京都府警ハイテク犯罪対策室などは8日、わいせつ物公然陳列容疑で、川崎市川崎区小川町の風俗店従業員を逮捕した。過激な性暴力を表現した日本製ソフトは海外の人権団体からも批判されており、業界が制作を禁止するなど問題化している。

 逮捕容疑は6月21〜22日、ゲームソフト「レイプレイ」のモザイクを外した改造版をファイル共有ソフト「シェア」を使ってネット上に流出させ、不特定多数が閲覧できる状態にしたとされる。府警によると、容疑者は「ファイルを取り込んだが流出させていない」と否認しているという。

 府警は当初、市販ソフトがネットに多数流出していたことに関する著作権法違反容疑で捜査していたが、より過激な内容に改造された点を重視、刑法のわいせつ物公然陳列容疑での立件に踏み切った。

 「レイプレイ」は18歳未満への販売禁止ソフトとして、平成18年4月に横浜市のメーカーが販売。痴漢行為を通報された報復として、プレーヤーが少女2人と母親を監禁したり、妊娠させるなどの内容になっている。

 英国では今年2月、「国内の映像審査団体の審査を受けていないのに流通している」として国会でも取り上げられ、5月には米ニューヨークに本部を置く国際人権団体が「性暴力を助長する」としてメーカーや販売会社に抗議文を送るなど批判が相次ぎ、大手通販サイトでの販売が中止になったり、メーカーによる出荷自粛も決まった。



ものすごくきな臭い。2件とも。
掲示板の件。容疑者は自分で画像を見たかった、と自供しているが、彼はまだ19歳の未成年である。
あくまでも推測に過ぎないが、自供を取らないと「児童ポルノ法」でのサイト開設者の立立件は非常に難しいのではないだろうか。掲示板に画像のURLを貼り付けた実行犯は逮捕されても文句は言えないと思う。
ただ、ここでの開設者。やはりあくまでも推測に過ぎないが、未成年であるということ(名前が公表されない)、書類送検で済んだことなどから考えるに、取調べ上で自白の共用があったのではないか、と推測してしまう。もちろん、考えすぎかもしれない。だが、警察側としてはこのように実例を作りたかったのではないか、とも思ってしまう。
今回はどのような経緯があったとしても書類送検で終わっているということで少年側がこれ以上この問題に深く関わることはないのだろうが、これはどの掲示板、引いてはどこのブログでも起こりうる事象である。
この日記にもコメント欄があり、自由に書き込みが出来るようにしている。しかし、悪意のある第三者がこのコメント欄に児童ポルノ画像のURLを書き込み、それを触れ回り、多くのものがその情報を知り、そのサイトへの踏み台にされてしまう可能性はコメント欄を備えているブログでは起こりうる事象である。
もしこうなったらブログの開設者である私も犯罪者として逮捕されてしまうのだろうか。コメント欄を放置した、もしくは、コメント欄を誰でも書き込み自由な状態にしていたことが犯罪なのだろうか。

そして2件目。
p2pでファイル共有を行うということは、確かに著作権にも、わいせつ物陳列罪にも当たる可能性はあるだろう。
p2pを使っている、ということは、本人にその意識が無くても、利用しているアプリケーションによってはその利用者も「送信」を行ってしまい、拡散の手助けをしてしまっている可能性はある。
ただ、今回、著作権法ではなく、より罪の軽いはずである「わいせつ物公然陳列罪」が容疑となっていることにきな臭さを感じずにいられない。
確かに著作権法親告罪であるので、それが適用できなかった、ということであるのなら、まだそれはわからないでもない。しかし説明が
「府警は当初、市販ソフトがネットに多数流出していたことに関する著作権法違反容疑で捜査していたが、より過激な内容に改造された点を重視、刑法のわいせつ物公然陳列容疑での立件に踏み切った」
とある。これが事実であるならば、まずは著作権者からの申し立てがあったのか、そして、「より過激な内容に改造された点を重視」とあるが、著作権者の申し立てがなければ本来著作権法では立件できないはずである。しかし、著作権法で捜査をしていた、ということは、申し立てがあったのか無かったのかはっきりしていないが、通常「レイプレイ」のような経緯があった作品について著作権者が申し立てをした、とはとても考えにくい。にも関わらず、なぜこのソフトについての問題でこのように逮捕者が出たのか。
「レイプレイ」という陵辱系ゲームの自主規制の過程を経てのこの流れである。他の市販ソフトであればまだ納得できる部分はある。「レイプレイ」だったからこそ、疑問を感じずにはいられない。

掲示板の件も、p2pの件も、警察側が前例を作りたかったがために行われたことなのではないだろうか。
行政は今児童ポルノ法改正で与野党の協議が続いているようである。にも関わらず、警察のこのような動き。

自民党の葉梨議員は警察官僚OBですよね…

10年前なら国民を詭弁で騙すことは簡単に出来たかもしれない。メディアが育成していなかったから。
ただ、今は違う。能動的に様々な情報を取捨選択することが出来るようになった今、「おかしい」と気がつく人数の割合は99年に比べて圧倒的に増えている。
警察やマスなメディアを見方に付けた規制派の面々はそれを理解していないのではないか。

そして、最も大事なことは、規制派も、規制反対派も、誰もが実際に実在の被害が出る児童ポルノは根絶させなければならない、と思っていることだけは間違いは無い、と信じている。
しかし、今の与野党協議、及び、(特に)推進派の活動、警察の動きなど、単純に「エロ」を取り締まれ、という流れになっているだけのような気がする。

捜査権の乱用防止、表現・思想の自由の保護。これが安定しない限り、民主主義の未来は無い。
現行の「児童ポルノ法」でもっと現存する「児童ポルノ」を取り締まることは可能だろう?そして、それの取り締まりの行き過ぎを監視することが行政や国民なんじゃないか?