「焦点となっていた「単純所持」を禁じることで合意した」だけで修正案が全て合意したわけではない

11日未明になり、毎日、読売などが報道しはじめた。
が、これは世論操作の何者以外でもない。

・毎日
児童ポルノ:「単純所持」も禁止 与党と民主が合意」
http://mainichi.jp/select/today/news/20090711k0000m010133000c.html
 18歳未満を写した性的な画像を所持することへの規制を強化する児童買春・児童ポルノ禁止法改正案について、自民・公明両党と民主党は修正協議で、焦点となっていた「単純所持」を禁じることで合意した。今後、処罰範囲などを具体的に詰め、会期末が迫る今国会での成立を目指す。

 児童ポルノの所持については、与党、民主党ともに規制を強化する改正案を提出。しかし個人で見るためだけに所有する「単純所持」を禁じ、そのうち「性的好奇心を満たす目的で所持」した者を処罰する与党案に対し、民主党は「画像を気付かずに持っている人が、恣意(しい)的な捜査で摘発される恐れがある」として、処罰対象を「有償または反復して取得」した場合に限る改正案を提出していた。

 9日に衆院法務委の両筆頭理事と実務者議員による2度目の修正協議が開かれ、民主党側が「有償・反復取得」を取り下げ「単純所持」を違法とすることで了承。代わりに「自己の意思に基づいた所持」であることを捜査機関が十分に立証するよう求める条文を盛り込むことで合意した。ただし、改正法施行前から所持していた画像については、処罰対象に含むとする与党側と「さかのぼるべきではない」とする民主党とになお隔たりがある。


・読売
児童ポルノ所持禁止へ法改正、与野党が合意」
 児童買春・児童ポルノ禁止法の改正をめぐり、自民、公明の与党と民主党は、焦点となっていた児童ポルノの画像などを個人が取得して保管する「所持」も新たに禁止事項とすることで基本的に合意した。

 3党の協議では、過去に入手した児童ポルノも処罰の対象とするかが対立点として残っているが、「法律で禁止するが、処罰対象とはしない」とする方向で調整している。

 3党は、今国会で改正案を成立させる方針で一致しており、週明けに各党内の手続きを経たうえで最終的な合意を目指す意向。ただ、政局が流動化することも予想され、成立するかは不透明な状況。

 同法はすでに児童ポルノの「製造」「販売」などは禁じているが、「所持」は禁止しておらず、懸案となっていた。このため与党は昨年6月、所持を禁止する改正案を衆院に提出。

 一方、民主党は「捜査権の乱用につながる」として所持の禁止には慎重で、繰り返しの取得や有償での取得に限り禁止する改正案を提出していた。今年6月に衆院法務委員会で審議が始まり、改正案を一本化する修正協議が水面下で行われていた。


一方、産経では11日の12時の時点で、「単純所持の合意」といった旨の報道はしていない。

つまり、毎日、読売とも
「自民・公明両党と民主党は修正協議で、焦点となっていた「単純所持」を禁じることで合意した」
という、こういう「方向にしよう」ということだけは合意した、というだけであって、
毎日では「ただし、改正法施行前から所持していた画像については、処罰対象に含むとする与党側と「さかのぼるべきではない」とする民主党とになお隔たりがある。」
とあり、読売では「3党の協議では、過去に入手した児童ポルノも処罰の対象とするかが対立点として残っているが、「法律で禁止するが、処罰対象とはしない」とする方向で調整している。」
とある。つまりこの「単純所持は違法とする方向にしよう。でも、法律施行後に入手したものだけを対象とするか施行以前からあるものも対象にするか」という点は全く決まっていなく両者との折り合いは付いていない、ということである。
よって、与野党合意案などというものは今作成中ではあるけれどもそれが困難を極めていてまだ出来ていない、出来る見通しもわからない、というのが現状であり、こういった背景から産経では
「まだ決まっていない」
ということで報道をしなかったのではないだろうか、と推測される。

テレビや新聞での報道は、それらを見ている人のみならず、ネット上でのニュースを見ている人たちにも伝わる。
見出しで「焦点となっていた「単純所持」を禁じることで合意した」とあれば
「ああ、もう決まっちゃったんだ」「まぁ、しょうがないよね」「これだから日本の政治は」
と、諦めムードを作り出すことができる。これがメディアの世論操作だ。
もともと与野党とも「単純所持」について違法とすることは以前から決まっていたことだ。しかし、入手方法や過去のものにまでさかのぼるかどうか、ということがずっと議論されており、それはまだ決まっていない。
ので、読売も毎日も誤報ではない。誤報ではないが、なぜ今このタイミングで報道するのか。
協議が行われたのは9日なので、本来なら10日にも報道できるはず。でも、なぜか11日未明になって両社とも報道しだした。
今週末は都議選もあり、国会議員は都議選の応援で走り回っている。もしも10日にこの報道が流れれば規制反対派が協議会に参加している国会議員にいろいろと問い詰める「隙」を作ってしまうが、11日に流れたことによって「今は都議選の応援」で対応できない、とすることが可能となり、事務所自体も土日で休みなのでなんらかの声が届くとしても13日の月曜になってしまう。
それまでに規制反対派の諦めムードを作り出すコトだって可能だ。

まだ、決まってない。まだ修正案は決まっていないし、修正案が出来たところで、各党に持ち帰り、各党での手続きを経て、衆議院参議院、と採決の方向へ行く。
衆議院で可決されても参議院で否決されれば再度衆議院での可決となるが、今国会の解散時期が不明瞭なこともあり、この法案が最終的に可決されるかどうか、本当に不透明である。
だからこそ、諦めたら負け。
少なくともこの件に関しては毎日も読売も偏向報道ではあるが、誤報ではない。しかし、見出しだけ見れば「もう決まった」と思わせるだけの力を持つ、世論を操作することも可能な「偏向報道」であることは明らかだ。

以前にもURLを載せ、トラックバックを受け付けていただいた社民党の保坂議員の日記がおそらく日本で一番このことについて公平に、かつ、事実に基づいて記述されているものであると思う。
(保坂議員、トラックバックを受け付けていただいてありがとうございます。失礼ながらこの場を借りてお礼申し上げます)
情報は、能動的に受信し、自分で取捨選択をしない限り、自分で考える、ということの出来ない人間が増えていくだけだ。